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福満しげゆき「生活」の完全版が発売されとる!
10話までを収録した第1巻が発売され、その後どんな事情があったのか知らんが音沙汰無いまま未完の傑作として伝説化してしまうのではないかと危惧されてたけど、これまた知らん間に物語後半部148頁を追加収録して今年5月にひっそり刊行されとった。
 
それぞれがパッとしない生活をしながら鬱々とした日々を送っていたフリーター「オレ」、ニート「僕」、サラリーマン「オジさん」が、「悪いヤツ」を通り魔的に成敗する計画を思いつく。しかし、「オレ」たちの思いとは裏腹に通り魔グループはどんどん組織化されていき自警団として逆に街を掌握してしまう。ついには自警団化した組織と「オレ」たち3人の密かな抗争が始まる。
 
ストリートファイト系マンガは数あれど、この「生活」ほど自分自身にシックリとくるマンガは他にない。世に出て人気を博しているストリートファイト系マンガは、やたら気合が入ってたり、主人公がガンバって努力して成長したり、友情があったり、恋があったり、自分にとってウザい要素が多過ぎて、読んでても10頁ほどですぐ飽きちゃうんだよな。それに比べてこの「生活」は、卑屈で、ネガティブで、間抜けで、鬱屈としてて、でもそれでいて何故か爽快で。作者である福満しげゆきが持ってる「世の中への妬み」パワーが全開。その負のパワーが逆に心地良いくらいに潔い。
ニート、フリーター、しがないサラリーマンが、それぞれの冴えない生活を一掃しようと始める通り魔計画。でもその計画は全然スマートじゃないし、鈍臭いし、そしてたとえ次々と「悪いヤツ」を殴り倒していったとしても、やっぱり冴えない日々は平行して続いていく。第1話「そこらへんの人の生活」から始まって、最終話「やっぱりまたいつもの生活」で終わるこの「生活」という作品が、きちんと完全版として刊行されたことが非常に嬉しい。
自分の生活に鬱屈としている人は、読むべし。

生活【完全版】 (KCデラックス)

生活【完全版】 (KCデラックス)