気分高揚シネマ×3

『BLUE VELVET』
ジェフリーは急病で倒れた父を見舞った帰り、切り落とされた人間の耳を発見する。やがて、歌手ドロシーが事件に関係しているらしいことを聞かされたジェフリーは彼女に接近。次第に彼女の魅力の虜と化していくのだが、同時にその裏に渦巻く犯罪と欲望に取り込まれて行く不条理サスペンスの秀作。
実はこれオレのDavid Keith Lynch初体験映画だったりします(エレファントマンのほうが後だったんよね)。中学校の時に友達から借りた映画音楽大全集みたいなCDにこのテーマソング"Blue Velvet"が収録されてて「んあ〜、なんてキレイな曲なんだろう、さぞかし美しい映画に違いない」と思い近所のビデオ屋さんでレンタルしてみたら冒頭からオッサン脳梗塞で倒れるわ、主人公は道端でちぎれた耳を拾うわ、極めて暴力的なセックスシーンはあるわで、以後しばらくこのテーマソングも聞けなくなるほどオレの中ではトラウマティックムービーになってました。もちろん今は全然平気で、この常軌を逸したLynchの演出に拍手喝采なんだけどね。彼はホント「日常のすぐ隣に潜む底無しの淵」を切り取るのが天才的にうまい。だからこそこのBLUE VELVET然り、TWIN PEAKS然り、彼の映画はスモールタウンが舞台となるのだ。この映画のオープニングにはその全てが凝縮されとる。抜けるような青空から庭先の真っ赤な薔薇へ画面は移り、小さな街で暮らす人々の日常と切り取り、次第にカメラは地底深く潜りそこに蠢く虫を執拗なアップで映し出す。大人になって改めて観直すとその表現力の素晴らしさに言葉を失う。鬼才とはこーゆー人のこと指す。ちなみに舞台はNCのLumbertonだよ。ケンチャンの近く。

ブルーベルベット〈無修正版〉 [DVD]

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『BAD EDUCATION』
映画監督エンリケのもとに少年時代に神学校で一緒だったイグナシオが現れる。当時の思い出を脚本にしたというイグナシオだが、その言動は怪しい。彼は本当にイグナシオなのか?現在の男2人の確執に、イグナシオの脚本を映像にした部分、さらに神学校時代が交錯し、切なさと衝撃の混じり合ったラストへ向かうPedro Almodovarのスペイン映画。
基本的にオレはゲイがテーマの映画があまり好きではありません。だって商業ベースのゲイ映画って往々にして過剰なほど感傷的だったり、悲劇的だったり、オシャレ要素だけを前面に打ち出してたりして正直ツマンナイんだもん。日々自分たちが経験してるゲイ生活のほうが断然魅力的で刺激的だったりするし。そんなゲイ映画に対して評価の低いオレですが、この映画はオモロかった。ゲイ映画にありがちな卑屈な感じが一切排除されてる良質のサスペンスだと思う。妙に湿っぽくてドロッとした演出も良い。ノンケ設定でも全然通用するストーリーを敢えてゲイ設定でやり通したってのにまずは拍手。ストーリー本編と過去と劇中劇が互いに交錯して進んで行き、見てる側も何が真実で何が虚構なのかちょっと混乱する感じもまた良し。途中で出て来る極楽とんぼ山本のような女装子のキタナさにもアゲ。主演のGael Garcia Bernalのカワイさにもアゲ。DVDパッケージはやたらお耽美な仕上がりでサゲ。 
『BLUES BROTHERS』
刑務所から出所したばかりのジェイクは弟エルウッドと共に生まれ育った孤児院の窮地を助けるために、かつて活動していたバンドを再結成することに決定。警察やナチなどに追われながら昔のバンド仲間を訪ね歩く今更説明不要のエンターテーメント娯楽作。
以前から観よう観ようと思ってましたが、やっと観れた。てか、半端無くオモロくてビビった。キャスト豪華過ぎ。物語序盤にある教会でのJB牧師によるミサシーンは圧巻。もぅこれはミサなんだかライブなんだかワケわからん。でも南部のミサってもしかしたらホントにこんな乱痴気騒ぎのミサが毎回繰り広げられてるのではないかと勘違いしてしまいそうな気もする。fighting temptationのAnn Nesbyによるミサシーンに匹敵する感じ。精霊の一撃がッ!!ハレルヤ!!…それにしてもJBの黒過ぎる顔と滝のような汗が暑苦しくてグッド。さらにメイド姿のAretha Franklinが激アゲ。普段こーゆー人ってライブでクチパク絶対にやらないから映画のアフレコでクチパクやらせると下手クソだね、やっぱり。せっかくだから撮影音源そのままを録音したら良かったのに(JBは撮影リアルタイム録音らしいです)。あとステージでのCab Callowayが断然良かった。その後に登場するブルースブラザーズ本人たちが霞んでしまうほど。黒人と白人を同じステージに出すとやっぱ持って生まれた底力の差が歴然となってしまうね。歌のセンスでは白人は黒人に勝てんな、ハッキリ言って。映画全体はとにかく演出が派手で爽快でした。あまり普段はカーアクションとか映画の要素として全然興味ナイんだけど、この映画はカーアクションがスゴかった。独特なテンポと絶妙なアングル。あんなにもスピード感を伴って片っ端から大破したら見る側としても気持ち良い。とくに映画前半でモール内部を破壊し尽くすシーンのカーチェイスは爽快。Chicagoが舞台なのにセックスもドラッグも劇中には登場しないのもまた良し。Steven Spielbergカメオ出演しとった。