愛しき子供ジェンダー

人間には『男』と『女』、2つのジェンダーがある。でも実はもう1つのジェンダーもある。それは『子供』。男でも女でもない、まさにその二極化される以前のジェンダー。男も女も、それぞれが男として、女として確立されるとそのジェンダーとしての責任を果たすべき役目を負う。子孫を残し、家庭を築き、社会と調和を保ち、そんな責任を背負って生きて行くある種の束縛を約束され覚悟した時に、子供というジェンダーは男や女といったジェンダーに分化していく。つまり男や女といったジェンダーになるという事は、社会に対して自分は何らかの責任を追う覚悟ができている旨を宣言したと同じであるような気がする。でも子供の頃は誰しも社会だとか家庭だとか、そんな所謂うざったい束縛をされることもないし、性差など気にする事なく戯れ生きていて、それでいて極めて自分の欲求にとても素直。世の中には多くの人たちに混じってそんな子供のまま育った大人たちもいる。たしかに成人して社会に出て働いたりしてるが実はその中身は子供。大人のかわを被った子供。ヒツジのかわを被ったオオカミ。そんな素敵な子供ジェンダー。この子供ジェンダーの出現率はノンケよりゲイに明らかに多く、何かを表現しようとしている人たちに多い。だってゲイは、ノンケが結婚して子ども産んで家庭作っていう一連の流れに伴い発生する様々な責任なんかに束縛されてしまう事もないような生き物だし、何かを表現しようとしてる人はそれゆえに自分に素直で自分の欲望に対して正直だから。 かくゆうオレも明らかに子供ジェンダー。そしてオレのまわりもたくさんの愛すべき子供ジェンダーくんたちがいっぱいいます。
今回は12/1〜12/3まで研修で東京へ出張だったんだけど、その間ずっとこの子供ジェンダーな人々と戯れてました。もぅ研修のことなんかコレっぽっちも頭ん中に残ってないくらいに。とっても自分に正直な人たちで、とっても愛おしくて、とってもカワイらしい彼らをオレは大好きです。
(ここまではあくまで前フリ。今回の日記は長いヨ、東京が楽しすぎたからキチンと文章に留めておきたいの。ココロして読んでね。)

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12月1日(金)
早朝の飛行機が安いから朝一番の飛行機で行くようにと病院の経理よりお達しがあったので5時起きして東京へを旅立ちました。朝の岡山は寒すぎです。しかも岡山空港って山ん中にあるもんだからホント朝ぼらけ朝ぼらけ。東京に着いても正午までには随分と時間があるのでホテルにチェックインだけ済ました後、どーしよっかなーと暫く思案。
「あ、そーだ。渋谷でエッシャー展やってるから行こう。」
今回の東京テーマは「歩く」だと自分で決めてたので南新宿から渋谷めざして歩き出しました。JRで10分弱なので大した事ナイだろうと思ってましたがかなり甘かったです。ダウンも着てたので汗ビシャビシャ。歩けど歩けど見覚えのある渋谷の街並は見えず。歩けない距離ではないけど、喜んで歩く距離でもないわな。渋谷のハチ公前に着いたのはもう昼もシッカリまわってました。しんどー。腹減ったー。暑ちぃー。でもそんなこと気にもせずbunkamura目指して道玄坂をグングン昇りました。だってエッシャーだもん。スーパーエッシャー。楽しみー。 途中で通り抜けた東急デパートには変なバルンガ(ウルトラQ)みたいなクリスマスディスプレイがあちこちの天井からぶら下がっててビビッた。
 
んで、そのスーパーエッシャー展。ものすごオモシロかったです。スゴいね、DSを入場者一人一人に渡してそれで音声解説してくれんの。DSタッチパネルに表示されるその作品をポチッと触るとイヤホンからアナウンスが流れて。でも途中からイヤホンがウザくなって外しちゃった。それにしてもエッシャーおもろい。ホントにおもろい。ダントツに好きなのが『階段の家』っての。気持ち悪くてものすご好き。有名な『昼と夜』(田園風景を鳥が左右対称に飛んでく例のアレ)や『滝』(下へ落ちて行ってるハズの滝がいつのまにか最上階に戻ってる例のアレ)とかもシッカリ眺めてきました。微生物をモチーフにしたお札コンペの作品とかもあったりして。あと、音符を円で表したグラフィックノーテーションとか(円の水平がCで角度が付く毎にC-C#-D-D#って変化して180度で1オクターブ上のCになる)。キャドセンターが作成したネクストラックスって展示もホエーって感じでスゴかった。エッシャーの絵が三次元構成のCGで巨大なタッチパネルに映し出されてて、その画面を触るとエッシャーのあの奇妙な絵がグリングリン動く。船酔いしそうなほど動いてました。あまりにも多くの正則分割を眺めてたので、エッシャー展から出た後も道路のタイルやゼブラ柄のイスとか見る度に「あ、エッシャー」って思ってしまう。ぜんぜん違うんだけどね。どうやらエッシャー病。それくらいオモシロかったよ、スーパーエッシャー。どうだ、羨ましいだろケンチャン。でへへ。
《スーパーエッシャー展→http://www.ntv.co.jp/escher/

夜は、ひろぱげくんと再会。新宿の「友(チング)」って韓国料理屋で再会の祝杯をあげました。器用にコリア語でも書かれてるメニューを読んでひろぱげくんが注文してくれる料理の品々は、本当に旨くてビックリした。2人でビールそれぞれ飲んでマッコリも1リットルとか飲んで更にまだ焼酎とかも飲んで。マッコリうまー。こんな旨かったのか、マッコリ。名前が変で侮ってましたスミマセン、マッコリ。独特なフォルムの鉄板で焼かれた豚肉をサンチェに包んで勢い良く旨そうに一口で頬張りながら音楽の話なんかを嬉々として語り続ける彼は、明らかに子供ジェンダー。会話の振り幅が広くそして深い。一体この人はいくつの引き出しを備えてんだろうって。喋っても喋っても喋り足りないね。矢野顕子のDVD貰っちゃった。「S席コンサート」ライブと、「Super Folk Song」ドキュメント。めっちゃめちゃ嬉しい!ココロして観ねば。
《裏ひろぱげ→http://homepage.mac.com/hiropage/
 
12月2日
本当はこの日の研修が目的の上京なので一番気合を入れなきゃイケナイんだろうけど、ぜーんぜん記憶にナイの、研修は。てかカウンセリングのロールプレイとかで喋りっぱなしだったんだけどね。ただ、なんだかヤケにウザイ感じのオバハンがいて辟易とした。基本的にメンドクサイ人が多い職種なんだなって改めて痛感した。もー、そんなのイラナーイ。
 
研修終了後は早々に会場を退散して体育Cutsくんと待ち合わせ。土曜のアルタ前はすんごい人出でしたが、そんな人混みの波間にカッツくんの人懐っこい笑顔を発見。よかったー迷子にならず無事に集合できて、オレ。 ホテホテ2人で歌舞伎町を横切ってトンカツ茶漬けのお店に連れて行ってもらいました。始終オレがニコニコしてるもんだから何度も「どしたの?」って言われちゃった。嬉しくってね、顔がほころんじゃうんだよー自然と。 んで、このトンカツ茶漬けのお店がめっちゃ旨かった。ごはん頬張りながら怪獣の話をするときのニュートラルな声のトーンとは違って、「すいませ〜ん」とお店の人を呼ぶカッツくんの声はやけにハリがあってサスガだと思いました。水泳部だった時のコトとか、ミセコやってた時のコトとか、特撮や怪獣の話だとか、意外に共通点が多くて一方的にシンパシーを感じてしまったりして。
食後にベローチェに向かう途中、スターウォーズの白い人たち(帝国の兵隊)がウロウロしててビックリした。何か外国のテレビの撮影っぽかっけど。体育Cuts海外メディアにもチラリと露出。ベローチェでお茶しながら極秘裏に進んでいたプロジェクトの品を渡しました。

岡山の才能の結晶です。刺繍職人によって見事に刺繍が施されたジーパン。しかもこの「書」を書いたのは、私生活は乱れまくってんだけど書道にだけは並々ならぬプライドと自信をもった書道家ギャルが魂を込めてしたためた一筆。このプロジェクトのために何度も何度も筆を振るい、「この字は和食で喩えるなら創作料理なの!それに比べてこっちの字は刺身なの!素材の持ち味と包丁の技が命なの!だから文字が持つ本来の力や勢いと、アタシの筆の技だけで勝負をかけた字なの!だからアタシはコッチの字がオススメなの!」と、推敲に推敲を重ね選び抜かれた文字を使用。カッツくんにも喜んでいただけたみたいで岡山軍勢が本当にガンバって作った甲斐がありました。「体育Cuts」なので「体育斬」。ご愛嬌。
それにしても素のカッツくんは本当にニュートラルで大好きです。「RPGは続きが気になって途中ヤメが出来ないんよ。セーブして一旦寝ても、あ!エレベーターの中に残した女の子助けに行かなきゃ!とか思って起きちゃって」とニコニコしながら喋るカッツくんも明らかに子供ジェンダーベローチェの中で「レオ〜、ウルトラマン! レオ〜、君の番!」とか言っちゃって。何?君の番って(笑)、みたいな。
爬虫類の話とか、実家の頃の話とか、上京してからの話とか、聞けば聞くほど愛すべきカワイイ子供ジェンダー。ホントにオレの知ってる人たちの中でもトップオブ子供ジェンダーかも。大好き。ステージでのカッツくんももちろんカッコ良くてスゲーと思うケド、この普段のナチュラルなカッツくんはもっと好き。だって子供ジェンダー全開だもんな。
名残惜しくベローチェを後にし、新宿駅へ向かって一緒にホテホテと歩く道で今度は全身タイツっぽい変なバットマンに遭遇。一瞬ブラックデビル明石家さんま)かと思ったけどよく見るとバットマンだったよ。スターウォーズだのバットマンだの、新宿の夜はアツイね。
《体育Cuts→http://www2.odn.ne.jp/~haj65670/top/top.html
 
12月3日
テルチェックアウトしてから銀座のマックストアに行こうと思ってたんだけど、昨夜カッツくんと話したせいか怪獣のストラップとかがやけに欲しくなって何処かに売ってないかなーと思い秋葉原に行ってみました。さすがに銀座ではケムール人のストラップなんか売ってないだろーし。人生初アキバ。
意外に思ってたより何てこと無い街でした。多分本当のディープな秋葉原を見れてないからなんだろうけど。いくつか店を回ってみたけど、自分が思ってるようなストラップはありませんでした。残念残念。コレクター向きの何やらデッカいのは色々あったけど、そんなのは今いらないのよ。ガチャポンで売ってるようなチープなヤツで良かったんだけどね。やけにペギラがたくさんあった。量産されてんの?ペギラ。結局何も買わず街をウロついて人間ウォッチングしてみたりして。ゴソゴソしてました。やっぱマックストア行っときゃ良かったかな?
 
昼からはひろぱげくんがくれたチケットで伊東豊雄の『建築/新しいリアル』を観て来ました。建築のギャラリーなんて今まで行ったこと無かったけど予想以上にオモシロくてビックリ。建築とか美術とかを文章で表すのってホント難しいんだけど、一言で言うと「発泡」してました。何だか。エマージンググリッドって硬物であるはずの建築ってモンが、まるで液状化現象を起こして生き物みたいに流動的で波打ってる感じ。そんで、その内部が発泡してる。台中メトロポリタン・オペラハウスとか、まさに液体が発泡しとる。そして驚く程になめらか。macの表面みたいな。実際、展示用のディスプレイにmacが使われてたんだけど、そのmacも作品の一部かしらと勘違いしてしまいそうなくらい。
靴を脱いで実際そのエマージンググリッドを応用した建築の上を歩けるような展示があり、そこからの眺めをボンヤリ体感してたら「何かこの感じって身近にあるよなぁ…」と。暫く考えててハッと気付きました。鳥取砂丘だ。あのドッシリとした安定感があるにも関わらずどことなく流動的なあの不可思議な感じ。動かないハズの大地が一夜明けると表面の形が変わってしまってる、アレにもの凄く近い。白い液体で出来た砂丘って形容するのが自分的には一番シックリきました。
実際に伊東豊雄が手掛けた建築デザインの写真とともに何故かその時期その時期の所員数も表示されてるクロノロジーは「中野本町の家」が一番魅力的でした。建築って奥が深くて実はスゴイ魅力的な芸術だったのね。今まで全然知りませんでした。受け付けロビーの壁に掛けられてたヘルメットたちでさえ発泡してるように見えた。
同時に開催されてた「ブラック&ホワイトー黒のなかの黒」ってギャラリーの収蔵展にも行ってみました。伊東豊雄の迸るパワーほどのインパクトはありませんでしたが、唯一「ブラーボ!」って2×3mの白い紙にマーカーで描かれた絵の女たちは全員がことごとく死んだような目をしているのには驚いた。
伊東豊雄 建築/新しいリアル→http://www.operacity.jp/ag/
 
羽田へ向かう途中、偶然東京に出て来ているという愛知のマグノンくんと連絡を取り品川で合流。なんだか品川駅って便利だね。色んなトコロと連結してるし。やけに見渡しの良い駅構内にあるスタバでお茶。本当オレ今回の上京は常に誰かとお茶して喋ってるね。研修が目的の出張だってのに。気にしない気にしない。
お互いに新幹線/飛行機の時間が押し迫っているのであまりゆっくり時間は無かったけど色々とお喋りできました。ノンケが中学生〜高校生に経験して済ませてるような甘酸っぱい恋愛をゲイの子は大人になってからやってるようなもんだから切ない想いをすることも多いよね〜と語るマグノンくん。またしても子供ジェンダー発見。それにしてもよく考えたら今回上京して会ってる人たちってmacユーザーばっかりだね。類は友を呼ぶってのは、まさにこの事か。また今度はゆっくり時間あるときにお酒でも飲みながら語りましょー。
《マグノンくん→http://suzuka.cool.ne.jp/magnon/entrance.html
 

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楽しすぎて、大好きな子供ジェンダーくんたちに囲まれて過ごした東京を名残惜しく背にしながら羽田へと向かう京急に乗ります。明日からまた始まる雑多な日常に揉まれつつも、この素敵な子供ジェンダーくんたちとの想い出があれば何とかなるかなって思いながら。いやいや、そんな後ろ向きな生活じゃなくて、オレも子供ジェンダーとして超スロースターターでしかも超スローペースながらも歩き始めたこの足踏みを止めないようにしながら岡山で虎視眈々と生きて行かなきゃ。
いつも飛行機の小さな窓から見える、ちょっと上空の東京の光の海は、切ないくらいにキレイで涙が出る。