心肺蘇生と足底腱膜炎

たまには医療従事者っぽい日記。(でも実はそうでもない)

                  • -

うちの院長を叱り飛ばす夢を見ました。設定は病院スタッフみんなで初詣に行ってるところ。ふと高層マンションに目をやると不意に3階あたりのベランダから女の子が落下しました。「うわ大変だ!」と思い急いで駆け寄ろうとすると院長に「我々がわざわざ首を突っ込むことではない」とか言って制止されました。こいつは医療従事者のくせに何言ってやがるんだと腹が立ち「目の前の緊急事態に対して何もしないのは医療に関わる者として失格じゃ!ボケ!」と院長を一喝し、駆けつけました。「ビルの3階から女児転落!至急で救急車の要請を!」と急いで救急に電話。あっと言う間に救急車が到着するも女の子の保護者が不在なため、現場に居合わせたオレと院長が救急車に同乗して病院まで行きました。
いざ病院に着いて救急搬入口から駆け込んだはいいけど、既に急患でごったがえしていて予想以上の混雑状態。病院職員の手も足りていないようでスタッフから「こちらも手が足りてないんで蘇生の手伝いお願いします!」とか言われちゃって「え?オレが?」みたいな。でもすでに女の子は呼吸停止・心拍停止で一刻の猶予もない状態なので一緒にいた院長と目を合わせると院長はまた「ここは我らが手を出すべきではない。ここの病院の職員にお任せしよう」と知らん顔しようとする。もう腹が立って「おまえはアホか!そんなこと言っとるなら医者なんかヤメちまえ!」と怒鳴ってしまいました。すると院長もムッとした表情で「きみ、そんな事を言っていいのか。わたしはきみをいつでも辞めさせてことが出来るんだぞ」と言ってきたので更に腹が立ったオレは「じゃあもぅエエ!オレがするから、あんたはAED持って来い!急いで!早く!」と怒鳴り返してCPRを開始しました。そしてただひたすらにCPRを繰り返しているうちに目が醒めました。(夢の中とは言えキチンと手技が出来てて我ながら立派だと思いましたヨ。偉いぞ、オレ)
 
あー変な夢のせいで何だか異常に疲れたよーと思ってベッドから起き上がろうとすると左足が痛くて動けません。加重しようとしたら土踏まずのあたりに激痛が。まったく原因不明。ひぇぇ、歩けない。こ、これは明らかに異常だ。それでも右足は大丈夫なので何とか車を運転して職場までは行けたもののホントに歩けない。階段昇れない。自分とこの病院で整形外科受診すりゃイイだけど、どうもうちの整形は信用ならんので翌日に近所の整形クリニックを受診しました。病院受診ってほんとキライなのよ。自分は病院で働いてるくせに。今までは人間には自然治癒力っつーもんが備わってるから、おとなしく寝ときゃいずれ治るよってなスタンスだったのですが、仕事始めてからはやっぱそーゆーわけにも行かず。どうやら足底腱膜が炎症を起こしてるようです。もぅ、なんだそりゃ。足底腱膜って何?みたいな。どうにも歩けないので消炎鎮痛の静注してもらってケンタンとモーラスもらって帰りました。昼食後にケンタンのんだんだけど、ケンタンすげー!めっちゃ効いた!普段から薬なんか全く飲まないオレにとって、たまにのむ薬はほぼ百発百中で効きます。すげーよ、ケンタン
でも、色んな創作意欲だとか表現衝動だとかのテンションがあがって来てて、ちょうどいいタイミングで各方面からお誘いとかも受けたり機材が直ったり揃ったりしてる今の時期だけに、ぶっちゃけこの負傷で色んな活動にブレーキかかるのが、ものすごく勿体ない。仕事とかはいくらでもブレーキかかってくれてイイんだけどな。
 
(以下、足底腱膜炎について。自分の為の覚え書きみたいなもんだから興味無い人はスルーしてください。てゆーかほとんどの人が興味ナイっつー話だよね)
足底腱膜炎は足底筋膜炎、踵骨棘ともいわれ、踵骨足底部に疼痛がある変性疾患である。朝、起床時の第一歩が痛く、ごく短時間で消失してしまうことが特徴であるが、中には歩行により疼痛が増悪する症例もある。踵骨足底部前内側の足底腱膜の付着部に圧痛があり、軽度の腫張を認めることもある。踵骨側面X線写真で、踵骨足底部に骨棘の形成があることが多く、疼痛の原因として説明されることが多い。しかし、疼痛の原因は足底屈筋群の付着部の炎症であり、骨棘は変性に対する修復結果である。事実、骨棘があっても無症状なことが多く、疼痛が消失しても骨棘の大きさに変化はない。筋膜から付着部への腱膜様部分が経年的な変性により微少な断裂を起こし疼痛の原因となる。就寝中に再癒合した微小断裂部位が、起床時の歩行開始により引っ張られ、再断裂し痛みを生じる。これが毎朝疼痛をくり返す理由である。そして、断裂と癒合をくり返しながら、最後には断裂し癒合できなくなり疼痛が自然寛解する。踵骨枝を中心とした足根管症候群、足底腱膜線維腫症や踵骨脂肪体萎縮が主な鑑別疾患である。脛骨神経の内側踵骨枝は、足根管内や母趾内転筋筋膜貫通部でエントラップメントを生じ、足底腱膜炎や踵骨棘と同様、踵骨足底前内方に疼痛が生じるが、起床時数分間だけの疼痛と言うより歩行により疼痛は増悪する。足根管や踵骨枝に沿っての圧痛が診断の決め手となる。足底腱膜線維腫症は踵骨より前方で腫瘤を触れれば鑑別は容易である。踵骨脂肪体萎縮は踵部特有の張りのある脂肪体が萎縮して軟らかく移動性が大きくなり、踵骨を容易に触れるようになる。これも疼痛は歩行により増悪する。疼痛も起床時に限られ、数ヶ月で自然治癒する症例が大半を占めるので積極的な治療は必要ない。足趾、足関節のストレッチ運動を行い、歩行により疼痛が強くなる症例にはヒールカップを使用する。足底板やアーチサポートを処方することもあるが、市販の安価なヒールカップと効果に大差はない。竹踏みやイボイボの健康サンダルは発症を誘発することがある。鎮痛消炎剤の貼り薬や軟膏、クリームの使用は、原理的に正しいはずであるが、朝の第一歩の激痛を止めるほどではない。NSAIDs投与も同様で、仮に朝の第一歩の激痛を止めるほどの量を投与するとすれば、副作用のほうが目立ってしまう。数ヶ月の薬剤投与で改善したと言われる症例は自然寛解の可能性が強い。歩行により疼痛が増悪する症例にはNSAIDsを投与するが、効果は限定的であり投与中断により効果を確認しながら投与する。ステロイドと局麻剤の局所注入が著効を示すこともあるので、疼痛の激しい症例、歩行により疼痛が増悪する症例には、2、3週に1度、数回試みても良いが効果が数日しか継続しない症例に継続すべきではない。温熱療法やジアテルミー、マッサージなども行われるが、効果は短期間限定的で自己が行うストレッチ体操に優る物ではない。前述したように、大半の症例は数ヶ月、長くても3年以内には自然寛解する。したがって、手術の適用は非常に限られる。すなわち、疼痛が起床後の数分に限られず歩行に比例して増悪し日常生活に支障を来す症例の内、保存療法に抵抗して1年から3年以上経過した症例である。従来は踵骨棘が疼痛の原因とされこの切除が行われたが、現在は足底屈筋群の付着部の筋膜・腱膜切離を施行し、内視鏡下でも行える。個々の症例で薬剤や注射、装具や理学療法に対する反応は異なるが、数万人規模の調査では治癒までの期間がストレッチだけでも大差がない。したがって、効果的な治療法はないが鑑別診断をきちっと行えば大半は経過観察のみで積極的な治療も必要ない。