downtown

着々と読み進めています。最近は出張の移動時間が多いというのも手伝って、確実に読むペースとスピードがあがって来ている。本日も一冊読了。
東京バンドワゴン (1) (集英社文庫)
東京、下町の古本屋「東京バンドワゴン」。この老舗を営む堀田家は今は珍しき8人の大家族。79歳にして未だ矍鑠と古本屋を取り仕切る二代目店主の勘一。60歳にして金髪、伝説のロッカー我南人。画家で未婚の母、藍子。年中違う女性が家に押しかける美男子、青。そして本作のストーリーテラーとして登場する勘一の亡き妻サチ(幽霊)。さらにご近所の日本大好きイギリス人、寺の住職、定年間際の刑事、古本好きのIT会社社長などが入り交じり、春夏秋冬それぞれの季節をモチーフにした4篇のエピソードが繰り広げられる。』
カノックスです。超カノックス。よくこれだけカノックスのテイストを文字化して再現したなぁと感心します。文章の裏側に久世光彦(故)と向田邦子(故)の顔がチラつきました。
カノックスとは「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」に代表される、昭和の古き良きホームドラマの一時代を築き上げた制作会社。今の時代ではほぼ「コントか?!」と思ってしまうような、ちゃぶ台を中心に据えたお茶の間演出を、恥かしげも無く展開してくれていました。
ストーリーテラーを幽霊に設定した手腕もまた見事。舞台となる古本屋の二代目店主勘一(79)の亡き妻を幽霊として登場させ、ある時はフワフワと宙を漂いながら、ある時は仏壇に座りながら、ある時は堀田家の人々に寄り添いながら「あらあら、また一大事が起こってますねぇ。相変わらずなんとも賑やかな家ですねぇ、ここは。」と苦笑いしつつ、下町情緒たっぷりに「そろそろ銀杏の実が成り、金木犀の香りが届けられる時期になりましたねぇ」と季節の移ろいも的確に表現しながら物語を進行させる。これで読み手側が登場人物たちに感情移入しないわけがない。かつて、その家の「おかみさん」だった人物の愛情フィルターを一度通過してから語られているのだから。すぐに脳内に映像イメージとして再生できる。もし本当にドラマ化するなら、ぜひともこの亡き妻役は八千草薫にやってもらいたいものだ。そしてその夫はもちろん小林亜星で。
しかし、ひとつ大疑問が残ります。以下若干ネタバレ含。物語途中で60歳にして金髪の伝説ロッカー我南人が、自分のバンドを引き連れてビルの屋上で"ALL YOU NEED IS LOVE"を歌うシーンがあるのですが、これは映画"ACROSS THE UNIVERSE"へのオマージュと考えていいのかな?それともたんなる偶然か。それともパクりか。その、どれかによっては作品自体の質がドンと下がる。

東京バンドワゴン (1) (集英社文庫)

東京バンドワゴン (1) (集英社文庫)