tradition


そういえば先週末は東京で学会だったんだ。
しかもトーダイで。
正門のいちょう並木をあるきながらオザケン「いちょう並木のセレナーデ」とかを聴いたりして。パーフリ世代としてはトーダイでオザケン聴くのはマストでしょう、やっぱり。
赤門を何度もくぐり抜けてみたり。
あと、やっぱり安田講堂だなー。
まさにその安田講堂が学会会場になってたんだけど、やっぱり70年代好きとしてはホエーってなるね。この場所でまさにみんなバリケード組んでたのかとか、あの時計台んとこに放水されてる映像何度も見たなーとか、ここで最後の学生放送やったのかーとか。とりあえずもう一度アンラッキーヤングメン読み返そうとか思っちゃった。

(想像以上にキレイな講堂でした)
 
そんな学会の隙間を見つけて浅草の寄席へ。
タイガー&ドラゴン観て以来ずっと行きたかったのだ。
やっぱり江戸落語の聖地と云えば浅草演芸ホールでしょう。

それなりに町の往来も混雑してたんだけど、新宿や池袋や渋谷に比べてやっぱり人の流れはとてもスローモー。足腰弱いジジババの町なんだなぁと感心しつつ、自分のペースで歩けないことにちょっとだけイラッとしたり。ほら、競技水泳やってた人が一般のプールのコースで泳いでると、ノンビリ泳いでる一般人のペースにこっちまでスピードダウンして泳がなくちゃならなくてイラッとする時の感じ。ま、それもこの町の醍醐味なんだろうけど。
あと、人力車のニイチャンたちの「乗らないか?(ヤマジュン)」勧誘の激しさに若干ビビった。今時、歓楽街のポン引きもあれだけ強引に付き纏わないぞ、ホント。商魂逞しいなあ。
 
そして寄席ですが、まったくの未体験ゾーンに感動しまくりでした。
基本的に午前中からオープンしてて夜までぶっ通し、さらに365日休み無しで営業してんのね。寄席ってなんだかすげータフ。しかもお客さんも「笑おう」「楽しもう」って姿勢で来てるから会場全体のポジティブなオーラがスゲぇの。
そんなポジティブなオーラと、トラディショナルな空気感の混在。なんだか縦社会がキッチリしてるのが肌を通して感じる。前座の噺家さんは座布団裏返したり、名札(?)めくったり、基本全部自分でやんの。でも一番とか二番とかになるとそんな準備は見習いさんが袖から出て来て全部やってくれんの。
あと、基本的に古典やる人がやっぱり多いんだね。そんな中でちょっと異色だったのが、桂圓枝ってジイさん。もう結構な年齢の落語家なんだけど。「去年わたし癌やりまして…」ってトコから始まるのだ。「なんとか摘出手術して助かったなーと思ってたんですけど、悪性だったんで多分もう今年いっぱいじゃないかと思うんですよー」と続けるわけだ。聞いてるコッチとしては「えー!」とか思っちゃうんだけど、それでもそのジイさんはバカな事ばっかり云い続けて会場をドカンドカンと笑わしてんの。スゲーなぁ、と。このジイさんの人生って多分これでオールオッケーなんだな、と。噺家としての生きざまを見せつけられた。ホントおおいに笑って、おおいに涙が出た。ふと客席を振り返ると、舞台の上のジイさんとほぼ同年齢くらいの別のジイさんが客を席に誘導しながら働いている。この演芸ホールで何十年も働いて来た風貌のジイさん。多分、このジイさんは今まさに舞台の上で自らの癌告知をしながら落語を続けるジイさんと一緒に若い頃からこの世界で生きてきて、かたや舞台にあがり、かたや会場整理をしながら互いに歳を重ねてきたんだろうなぁ。そしてその長い年月の間にはどんどん若い世代が育って行き、そんな若手も見守りながら自らは老い、死も間近な今も舞台に上がってバカな話を繰り広げている。なんだか、寄席ってのは人生の交差点だとシミジミ思いつつ、浅草寺仲店通りの裏路地にある老舗の洋食屋フジキッチンでコロッケ食べた。

その日の前座で一番手に登場した新米落語家くん。
ガンバレよ!と本気で思う。