東京デスティネーション6

●本場でグミチョコパインを読む。
パチンコ好きが旅先でその土地の店に入りパチンコを打つ事を"旅打ち"と言うらしい。そして本好きが旅先でその土地に似つかわしい本を読むのは"旅読み"と言うらしい。(ホントか?)今回アサガヤに泊まるってコトで中央線が舞台となっている大槻ケンヂの「グミ・チョコレート・パイン」を持って来ていた。もちろん空いた時間に中央線の走るこの街で読むためだ。
今日は突然の予定変更となり週末が出勤になったため急遽休みとなった。これ幸いとばかりに本を片手にカフェへ。舞台となったこの街で一点集中砲火型青春群像小説を読む。なんてステキなんだ。
主人公たちが友部正人の「一本道」よろしくアサガヤからコウエンジまで貸スタジオの予約を取るため自転車で滑走する場面がある。フとその道を歩いてみようと思った。アサガヤからコウエンジまでのガード下には細い細い道が続いているらしい。いざ、本を閉じアサガヤ駅に向かい、コウエンジの方角を向くとその道は本当にそこにあった。
何の変哲も無い庶民の生活道路だった。でもそれが実に良かった。所詮、旅先の想い出なんて個人の思い入れに由来する極めて可変的なモンだ。ハッキリ言ってハリウッドやラスベガスに思い入れがないオレはそーゆー場所に全く興味が湧かない。しかしたとえ単なる生活道路であってもこーゆー場所には非常に思い入れがある。ちょっとウキウキ、シミジミしながら歩いた。アサガヤからコウエンジに近づくにつれ、その道は次第に混沌めいた雰囲気を醸し出してくるから不思議だ。狭いガード下にひしめく店と言い、すれ違う人々と言い。一筋縄では行かない感じがする。みうらじゅんはコウエンジを「日本のインド」と言ったそうだけど、その通りだと思った。
この薄暗いガード下の道を抜けコウエンジの駅で太陽の光を浴びたら、何だかちょっとだけ人生が脱皮できた気がした。
中央線よ、あの子の胸に突き刺され! (友部正人『一本道』)